ヘルメット・ブルース
「おい、おまん。 仕事があるだけんど、手伝ってくれるけ?」
隣に住んでいる、M兄ちゃんが声をかけてきました(兄ちゃんと言ってるけど、年上なんでそう呼んでいるだけです)。
彼は土木会社に知り合いがいて、たまに手伝いにいっています。
「何をするでー?」 つい、M兄ちゃんの口調に合わせてしまいます。
「俺もよくわからんけど、穴っ掘り(あなっぽり)らしいぞ。 その日に人手がなくて困ってる」
さすが、おおざっぱなM兄ちゃん。 仕事の内容はよくわからないまま、気軽に引き受けてきたようです。 まあ、土木作業員のアルバイトというわけです。
「ああ、いいよ。 やるよ」
私も二つ返事。 日ごろからお付き合いのある兄ちゃんに頼まれたら、断れないや・・・。
さて、当日。 現場に行くと・・・。
ここは、水力発電所ではないかい。 しかも現場はこの最上部!
ここに設置されている土砂除けのフェンスが劣化してきたため、張り替える作業が主な内容でした。
本日の作業員は6名。 お約束の金髪の少年もいます(゚m゚*) ゴールデンボンバーの鬼龍院 翔に似たⅠ君。 かわいい・・・。
本人に 『ゴールデンボンバーのボーカルに、似ていると言われたことある?』 って聞いたら、『たまに 言われるっす』 『そうっすか』
さて、スコップやツルハシ、ジョレン、クワなどの道具と資材を担いで出発。 歩き始めは緩やかでしたが・・・。
すぐに斜度45度はあろうかという急斜面に。 直線的に登っていくわけではないけれど、それでもキツい坂です。
お弁当や水を詰め込んだマイリュックに加えて、重い資材を運ぶのですぐに息が切れてきました。 うーん、こりゃ大変。
「おい、おまん。 ゆっくりとな・・・、ハァハァ。 休み休み・・・、ハァハァ。 呼吸はリズムをとって・・・、ハァハァ」 そういうM兄ちゃんが、一番息が切れているような。
延々と続くかのような作業道を登ること30分。 ようやく現場に着きました。
このフェンスの張り替えをするのです。 フェンスをよく確認してみると、崩れてきた土砂で下部がかなり埋もれています。
・・・このフェンス交換の妨げとなっている土砂を、M兄ちゃんと2人で取り除くことが我々の仕事でした。 穴っ掘りじゃないじゃん(lll゚Д゚)
年下の現場監督は『んじゃあ、よろしく~。 怪我のないようにお願いしますよ~』 と去っていきました。
まだ、息も整わない私たちは、思わず顔を見合わせました。
「ま、とにかくやるっきゃないぜ!」 「んだ!」
ここは発電所の施設の最上部。 初めてみました。 時折、落ち葉などのゴミを取り除く機械が音を立てて動きます。
しかし、かなりの土砂が流れ込んでいます。 まず大きい石を運んで・・・。 っと、漬物石くらいの石を持ち上げたら、何やら動くものが。 ヘビ!?
『きゃ~ !!(゚ロ゚屮)屮』
それは50cmはあろうかというマムシでした。 あっぶねー。 咬まれないでよかったー。
いきなり出鼻をくじかれ意気消沈。それからは手をいきなり突っ込まず、スコップで探りながら土砂を運びます。
高い木々に囲まれ、風の通らないこの場所。 湿気も多く、猛烈に暑いのもあって、気持ちの悪い汗が体中を流れおちます。
念のため多めに持っていったタオルは、次々と絞れるほどに重くなりました。 時折、平衡感覚がなくなる時があったので、座り込んで休憩。
これが熱中症の初期症状かなー、なんて思いながらペットボトルのお茶をグビグビグビリ。
でも加減して飲んでいかないと、水がなくなってしまいそう。 こんな自動販売機もない場所で、水が切れたらヤバいからね。
しばらくすると、別の作業をしていた70過ぎの作業員が登ってきて、差し入れをしてくれました。
梨味のアイス・・・。 少し溶けてたけど、美味しい! 生き返る!
アイス効果のお蔭か、かなり復活し無事作業を終えることができました。
ふらつく足で帰路につきながら、我ながらよく頑張ったよな~なんて思いました。
M兄ちゃんも 『今まで手伝った中で、一番エラかっとー』(エラかっと=大変だった の方言)と言っていたので、ほんと大変だったのでしょうね。
体力勝負の割合の多い土木作業員。 今回同僚になった70歳を過ぎてる現役の作業員の背中を見ながら、自分が70歳を超えてもこんなに元気なんだろか? と思うと頭が下がります。
世の中にはいろんな仕事があります。 どんな仕事もいいこと、楽しいことの裏側には大変なこと、ツラいことがあるはずです。
様々なことを経験してみれば、○○はうらやましい~なんて言うことを簡単に口走ることはできないですね。































